リスティング広告の費用対効果を測る指標のひとつにCPA(コンバージョンあたりの獲得単価)があります。当然ながら、獲得単価が低ければ低いほど費用対効果は高いわけですが、逆に問題となるのがCPAの値が目標値よりも高くなってしまうケースです。
そのような状況に直面した際、アカウントの費用対効果を改善するための方法として、
という意見をよく耳にします。つまり、「コストを抑えて費用対効果を改善する」という考え方ですね。一理ありますが、リスティング広告を運用する上で、その考え方が逆に「毒」となる場合もあります。
なぜか。
もっともシンプルな理由を挙げれば、
日額予算を下げれば広告のインプレッション減少につながりますし、入札価格を下げれば掲載順位が低下することもあります。インプレッションが減ったり掲載順位が下がったりすれば、必然的にコンバージョンの獲得数にもマイナスの影響を与えます。
コンバージョン獲得はリスティング広告運用の最重要目的ですし、そもそもコンバージョンが現時点より減少すればCPAはさらに悪化するわけですから、「広告費削減→コンバージョン減少→費用対効果の悪化」という負のスパイラルから抜け出せなくなる恐れがあります。
また、リスティング広告の運用は、参考となる配信データが多ければ多いほど最適化が容易になるという側面を持っています。予算を減らすことで広告の配信機会が抑制されれば、十分な配信データに基づいた検証が行えず、その結果として広告運用の最適化が思うように進まないという将来的な悪影響も懸念されます。
このように、CPA(=費用対効果)の改善を目的として「広告費を減らす」という戦略には、無視できないマイナス面があることを認識しておく必要があります。
リスティング広告はインターネット集客における「武器」です。それもかなり強力な。あえて言いますが、武器とは「攻める」ために使うものです。思考が守りに入った時点で勝率は確実に下がります。
そこで求められるのは、広告費を「減らす」のではなく、コンバージョンを「増やす」ことで費用対効果を改善するという思考です。「守り」ではなく「攻め」の姿勢で費用対効果を上げるという考え方はとても大切。
景気動向や経営戦略など、リスティング広告の運用担当者レベルではどうにもならない事情により、現実問題として広告費を減らすという施策が避けられない場合もあります。しかし、できる限り避けるべき道であることは確かです。
費用対効果が思わしくないとき、まず真っ先にすべきなのは、その場に踏み止まって戦う手段が本当に残されていないのか、冷静かつ徹底的に検討することです。戦略的撤退の道を選ぶのは、あらゆる可能性を見極めてからでも遅くありません。